[ネタバレを含みます]
アレクシ・ケイ・キャンベル脚本『ブラッケンムーア』(東京公演
1930年代のヨークシャー。斜陽産業となった石炭産業には急速
そこに、家族ぐるみの友人であるジェフリー・エイブリー氏と妻バ
息子の死に衝撃を受け10年間屋敷に閉じこもったままの母エリザ
やがて物語は急展開する。エドガーの部屋で就寝していたテレンス
まるで死の瞬間を再現するようにエドガーが落ちた鉱山の縦穴に落
「死ぬことは生まれること。ぼくは生あるもののすべて。ぼくはい
エリザベスは彼を抱きしめながら、長年抱えてきた思いを解き放つ
翌朝、「憑きものが落ちた」ように晴れやかな顔で目覚めたテレン
騙されたと怒るハロルド。しかしエリザベスはそれが「芝居」だと
一人残されたハロルドは初めてエドガーの名を呼びながら慟哭し崩
ふと窓辺のカーテンが揺れ、様子を見に窓辺に立ったハロルドが振
物語はざっとこんな展開。
「霊がとりつく」場面では舞台上が暗くなり青白い光に照らされた
テレンスの芝居の意図、そもそも芝居を打とうと決めた理由はなん
さらに、劇中では特に答えの提示されない「謎」も埋め込まれてい
この、「エドガーとテレンスの強すぎる絆」がひとつ。
もうひとつは、芝居を打ったことを告白した際に語られた「芸術家
テレンスは、オックスフォード大学に入学しながらも大学は退屈だ
しかし、テレンスのあの芝居がその「橋」なのだろうか。誰が「な
いろいろと宿題を抱えて、もう2回観劇した。残念ながら全ての謎
でも、最初に観たときよりは自分なりに少しは「こういうことかな
まず、テレンスとエドガーの絆について。これは、やはりただの親
二人は、固い友情というよりは、想い合う恋人同士に傾いた関係性
そして、ふたつめの「芸術家(artist)」というものについ
これはなかなか難題だ。そもそも「芸術家」、「芸術」とは?とい
幸い、公演プログラムにヒントになるインタビューが掲載されてい
なんと彼は2013年のイギリスでの初演時のインタビューで、次
ーこれは最終的にはなんについて書かれた芝居だと思いますか?
芸術についてだと思います。この戯曲の究極のテーマは芸術であり
おそらくテレンスは演技者という芸術家であると同時に、「人の痛
死というものが喪失であり、固定的な事実であり、不幸であり不可
しかしそこに「超自然」が割り込み、受け入れることで、死と生は
エリザベスが「辛く寂しく痛く苦しい中で死なせてしまった我が子
そうして大きな「壁」が取り払われてみると、すべてを狭い「定義
最後まで壁を取り払うことはできなかったハロルドにしても、やは
きっとエドガーの出現が、ハロルドも変えてくれる日が来るのでは
三度の観劇のなかでも、時間を追って演技の成熟が感じられて、東
人の心を一瞬で理解し、人を癒し結びつける生来の善意と、類い稀
あとで届いた原作を読むと、本ではハロルドとベイリーさんの二人
つまり、劇中のテレンスだけでなく、この芝居を演じる役者たち全
なんて重層的なお芝居だったんだろう!
なんて、舞台芸術って素晴らしいものなんだろう!
と、思わせてくれた作品。
制作に関わったみなさんに、お礼が言いたい気分です。